光のもとでⅡ
 部屋がノックされ、途端に緊張が襲ってきた。ドアを開けると、にこにこと笑っている翠が立っていた。
 翠は部屋に入ると、俺の前を楽しそうに歩いては自然な動作でベッドへ腰掛ける。
 ……すぐにでも説教したい。いや、あとで絶対にする……。
 そんな決心をする俺に、
「優勝おめでとう!」
 翠は何度目かわからない言葉をかけてきた。
 俺は翠の正面に立ち、
「翠、約束覚えてる?」
「え?」
「優勝したら願いごと、っていうの」
「あ、うん。覚えてるよ。願いごとって何?」
 変わらず笑顔で問われると、多少の罪悪感や後ろめたさを感じる。「願いごと」が何かも聞かずに了承したのは翠で、俺が悪いわけではないはずなのに。
 俺は小さく唾を飲み込み、
「翠を抱きたい」
 翠は何を思ったのか立ち上がり、
「いいよ。でも、そんなことでいいの?」
 見事に頭を右へ傾げる。
 たぶん、翠はただ抱きしめられるだけだと思っているのだろう。
 こんな抽象的な言葉を使って要求したところで、翠が違わず理解するわけがない。そんなことはわかっていた。それでも直接的な言葉を使えなかったのは、罪悪感が強かったからかもしれない。
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