光のもとでⅡ
 さすがにこの状態で期待を裏切るようなことはできず、翠の背に手を回し抱きしめながら、
「こういう抱くじゃなくて、翠が欲しい、って意味なんだけど……」
「え?」
 翠は腕の中で俺を見上げた。
「性行為……の意味」
 今度はしっかりと意味を理解してもらえたようで、翠はきれいにフリーズした。
 このままショーケースにだって入れられそうだ。
「願いごとはきいてもらえるの?」
 尋ねると、翠は腕の中でうろたえ始める。
 腕の中から出ていこうとはしないが、明らかに動揺していた。
「ツカサ……ごめん。この願いごとは――きけない。まだ、怖いの……」
 翠は俯き、小さな声でそう言った。
 きっとこれが本音で翠の本心。そんなことはわかっていて口にした。
 翠に言ってほしいと言われたから――自分の気持を伝えずにはいられなかったから、だから口にしただけ。
「抱きしめることとキスは?」
「……ドキドキはするけど、大丈夫。でも性行為は――」
 わかってる……。ならば、その代わりになるものが欲しい。
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