光のもとでⅡ
 翠は怯えた目で俺を見上げると、
「……怖いから、嫌なんだけど、でも、そしたらツカサは――私のこと嫌いになる? 愛想を尽かす? また距離を置く……?」
 翠の目から涙が零れた。
 俺が執拗に求め始めてから、翠は拒絶するたびに不安そうな顔をしていた。もしかしたら、今口にしたことをずっと懸念していたのかもしれない。そう思うと、少し申し訳ない気もした。その反面、こんなことで嫌いになるような男だと思われているのだとしたら、それはちょっと心外だ。軽視はしてほしくないけれど、そんなふうに思う必要はない。
 俺は翠に回した腕に少し力をこめ、
「嫌いにはならないし愛想を尽かすこともない。でも、距離を置くことはあるかもしれない。自分を抑えることができないなら、そういった関係を翠が望んでいないのなら、距離を置きでもしないと翠を守ることができないから」
 翠の肩がビクリと震えた。
 たぶん、「距離を置く」の部分に反応した。それには抵抗があるという意味なのだろう。
 俺だって置きたくて距離を置くわけじゃない。そうならないための予防策を自分なりに考えた。
 翠が許容できるもので、俺がもう少し踏み込めるもの。そんなものは数多くあるわけじゃない。だから、これだけは呑んでほしい。
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