光のもとでⅡ
 熱された鉄板のように熱い砂浜から湿った砂の上に変わると、足の裏が冷たくて気持ちがいい。でも、寄せては返す波に足を入れるのは少し勇気がいる。
 小さい頃から、足が掬われる感覚が苦手なのだ。
 手をつないでいた唯兄がおかしそうに笑いだす。
「リィ、まるで小さな子だね? 初めてのお使いならぬ、初めての海水浴」
「だって……本当に久しぶりなの。何年も来てなかったんだもの」
「一歩ずつ行こうよ」
 私はぎこちなく頷く。
「あんちゃんは彼女さんたちのとこ行ってきていいよ。リィには俺がついてるし」
「唯もいなくていいよ。翠葉ちゃんには俺がついているから」
 にこりと笑った秋斗さんに、唯兄は笑顔で応戦した。
「誰が狼に大切な妹を渡すかってんです」
 そんなふたりを見ながら、
「じゃ、俺は行ってこようかな。唯、何かあったら呼んで? 翠葉はがんばって」
「了解了解」
 私は、再度ぎこちなく頷いた。
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