光のもとでⅡ
 それに、自分のことが好きだ、と。秋兄には恋愛感情を持っていない、と何度も言葉にしてもらえるだけでいくらかは安心する。
 この際、「不安」が「嫉妬」であることを伝えてしまったほうが翠は気が楽になるのかもしれない。それでも、「嫉妬」という言葉が言うに言えない。
 ふと気になったのは、あの日空港で、翠はなんと秋兄に返事をしたのか――。
 自分を選んでもらえたことに満足して知ろうともしなかった。でも、今は気になって仕方がない。
 鎌田に返事をしたときと何か差があるのだろうか……。
 翠が何を考えているのかもわかりかねる状況で無音の時間が流れていく。その空気に耐えかねて、
「いい加減、エレベーターから出たいんだけど」
 言うと、翠は飛びつく勢いで自分側にあるボタンに手を伸ばした。

 玄関を入ってすぐ、翠を腕に閉じ込めキスをしたかった。でも、帰宅してうがいもせずにはできない。
 仕方なく洗面所に直行すると、翠はうがいをしている俺を廊下から見ていた。
 リビングへ行けば、カルガモの親子のようについてくる。そんな翠を手招きで近くまで来させ、俺はようやく翠を腕に抱くことができた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
 耳に届く翠の声がくすぐったい。
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