光のもとでⅡ
「いえ、なんと言いましょうか……今までも年頃の子どもをふたりほど育ててきたわけですが、そのときには味わえなかった心配ごとを抱えたものですから」
「……心配ごと、ですか?」
「えぇ……。湊や楓は高校生の時分には特定の相手がいなかったでしょう?」
 真白さんは、「そう言われてみれば」といったふうで宙を見上げた。
「ですが、それで何か心配になることがありますか……?」
 俺は苦笑を漏らし、
「年頃ですからね」
 とヒントを与えてみた。が、真白さんには答えがわからないようだ。
「性に関心を持つ年頃でしょう。男はとくに……」
 真白さんはカッと頬を染め、目を泳がせながら、
「涼さんもそうだったのですか?」
「まったくなかったわけではありませんが、自分は他人に関心を持たない人間でしたので、それほどそういった衝動に悩まされることはありませんでした。ですが、司は違います。想いが通った相手がいます」
 自分と真白さんは互いが成人していたし、結婚するまでそういった関係にはならなかった。しかし、それが司たちに通用するとは思えない。
 もし結婚することになったとして、司が大学を出るのを待ったとしても、あと六年強の時間がある。むしろ、その間に何も進展がないほうがおかしいだろう。
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