光のもとでⅡ
 単純な話、トレードする相手さえ見つければ衣装は作れるのだ。
「翠葉、よく気づいてくれたわ。そうよ、トレードさえできれば司の衣装を作ることはできるの。でも、司を団長にしなければ、長ラン姿の司が応援指揮しているところは見られないのよっ! どうっ!? 応援団の先頭で、長ラン白手袋している司、見たくないっ!?」
 それは――。
「見たいです……」
 長ラン姿の司ならば、デジタルアルバムに収録する撮影をするときに見られる。しかし、応援団率いる姿は応援団長でないと見ることができないのだ。
「翠葉、お願いしてごらん? きっと司は聞いてくれるから」
 嵐子先輩は「奥の手なのっ!」というような表情で私をツカサの前に追いやった。
 ちら、とツカサを見ると、司は目を瞑りこめかみのあたりを押さえていた。
 面倒なことになった、といった表情に仕草。
「ほら、視線を向けるだけであぁなのよ。言葉を添えればなんのその……」
 それはどうだろう……。でも、ここまでされたら何も言わないわけにはいかない。
 私はツカサの前に座り込み、
「ツカサ……見たいな。だめ……?」
「…………」
「どうしてもだめ……?」
 ツカサは急に立ち上がり、私の手を掴んで教室のドアを目指した。
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