光のもとでⅡ
テーブルにカップを置き、
「来ないでって言ったのに……」
「言われて来ないとでも思ったわけ?」
私は無言で去年のことを思い出していた。
去年の紅葉祭のときにも同じようなことがあった。あのときもツカサは涼しい顔をしてやってきたのだ。
「あんな翠を見て放っておけるほど、翠に対して無関心じゃないつもりなんだけど」
その言葉にはっとして顔を上げる。
無関心でないとしたら、次にツカサがとる行動は――。
「あのあと、赤組に行って風間に話を聞いた」
咄嗟に、私は会計で使っているノートパソコンを自分の背後へと追いやる。
「やだ……。会計の仕事は私がやる……」
ツカサはため息をついた。
「それを続けたらどこに支障が出る? どこに支障が出てもいいことはないと思うんだけど」
言われていることがもっともなだけに反論ができない。
「でもっ――」
「でも何?」
訊かれても続けられる言葉が見つからない。
「初回申請書をもとにミーティングした時点と今では状況が違いすぎる。会計の人間みんなが団長なり副団長の任に就いている。こんな状況で翠ひとりが会計の責を負う必要はない」
そうかもしれない。そうなのかもしれないけれど、この仕事は、この環境は去年私のためだけに用意されたものだ。そんな特別なものをそう易々と手放せるわけがない。
「来ないでって言ったのに……」
「言われて来ないとでも思ったわけ?」
私は無言で去年のことを思い出していた。
去年の紅葉祭のときにも同じようなことがあった。あのときもツカサは涼しい顔をしてやってきたのだ。
「あんな翠を見て放っておけるほど、翠に対して無関心じゃないつもりなんだけど」
その言葉にはっとして顔を上げる。
無関心でないとしたら、次にツカサがとる行動は――。
「あのあと、赤組に行って風間に話を聞いた」
咄嗟に、私は会計で使っているノートパソコンを自分の背後へと追いやる。
「やだ……。会計の仕事は私がやる……」
ツカサはため息をついた。
「それを続けたらどこに支障が出る? どこに支障が出てもいいことはないと思うんだけど」
言われていることがもっともなだけに反論ができない。
「でもっ――」
「でも何?」
訊かれても続けられる言葉が見つからない。
「初回申請書をもとにミーティングした時点と今では状況が違いすぎる。会計の人間みんなが団長なり副団長の任に就いている。こんな状況で翠ひとりが会計の責を負う必要はない」
そうかもしれない。そうなのかもしれないけれど、この仕事は、この環境は去年私のためだけに用意されたものだ。そんな特別なものをそう易々と手放せるわけがない。