光のもとでⅡ
 真白さんが二階から持ってきてくれたスケッチブックは五冊。
「このスケッチブックはお庭のお花や植物をメインに描いてあるの。これは数少ない風景画が描かれているスケッチブック。残りの三冊は動物のスケッチ」
 動物……?
「司は小さいころから物に対する執着心がなかったのだけれど、唯一動物だけには関心を示してね、幼稚園の遠足で行った動物園には何度も通ったのよ」
 もしかして……。
「葉山動物園、ですか?」
「あら、司が話したの?」
「いえ、あの……ツカサがどこへ出かけたら面白いと思うのかが知りたくて訊いたら、動物園って……。このあたりならどこにあるのかを調べようとしたら、『葉山動物園』ってすぐに教えてくれたので」
「ふふ、そうなのね。あそこには本当によく通ったわ。最初はすべての動物をスケッチするために。そのあとは、飼育員さんのお話を訊いてスケッチブックに生態や特性を書き込んでいたわね」
 そう言って、動物のスケッチブックを見せてくれた。
 最初の一冊はクレヨンを使って描かれたもの。しかし、クレヨンで描いたからといって雑さは感じないし、むしろ特徴をきちんとつかんでいて上手な絵だ。二冊目は色鉛筆かクーピーといったより綿密に描けるもので描かれている。そして、絵自体もより細かい描写に変化していた。それらの絵の余白スペースには動物の生態に関することがびっしりと書かれている。今ほど上手ではないにしても、几帳面であることがうかがえる文字だった。
「こんなにたくさん描くほど動物が好きなんですね」
「えぇ」
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