光のもとでⅡ
 コーヒーを飲みながら、涼先生は時計に目をやる。
「四時半ですか……。真白さんはそろそろ夕飯の準備ですね」
「あら、もうそんな時間ですか?」
「えぇ、そんな時間です。ですので、御園生さん、今日の夕飯はうちで食べていかれませんか?」
「えっ!? でも、お昼ご飯もご馳走になってしまったので……」
「何か不都合でも?」
「いえっ、不都合なんて――ただ、ご迷惑じゃないですか?」
 涼先生は真白さんを見て、
「真白さん、迷惑でしょうか?」
「いえ、そんなことありません。むしろ嬉しいです」
「だそうですよ?」
 ふたりににこりと笑いかけられ、
「……では、お夕飯を作るお手伝いをさせていただいてもいいですか?」
「喜んで」
 真白さんの了承を得たところでお母さんに電話をかけようとしたら、
「そのお電話、私がかけてもよろしいでしょうか?」
 涼先生に申し出られて首を傾げる。
「御園生さんのご両親とは、今年始めに病院で挨拶をしたくらいなので」
 言われて、お母さんが出たら代わることになった。
「お久しぶりです。いつも司が夜半におうかがいして申し訳ございません。何か目に余ることがございましたら、その場で叱っていただけますようお願いします。――いえ、そんなことは……。実は今日の夕飯なのですが、お嬢さんをうちの夕飯にご招待してもよろしいでしょうか。――それを仰るのなら、普段から会食だなんだとお手を煩わせているのはこちらのほうでしょう。――そうですね。次回、参加できるようなら参加させていただきます。今日の帰りは私がマンションまでお送りしますのでご安心ください。えぇ、そうですね。近いうちに会食でもいたしましょう」
 電話を切ると、
「そういうわけなので、ダンスの練習は食後にしましょう」
「はい」
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