光のもとでⅡ
Side 翠葉 08話
十月八日木曜日――中間考査四日前のため、今日から午前授業になる。
授業間の休み時間や放課後の風景が一変して、「あぁ、あと少しでテストなんだな」と肌で空気を感じられるくらい。
私とツカサは昇降口での待ち合わせ。
取り立てて珍しくもなんともない約束だけれど、紫苑祭の準備期間に入ってからというものの、学校で会うこと自体がほとんどなかったため、久しぶりのことに少しドキドキしている。
人が溢れる昇降口にツカサの姿を見つけて胸の鼓動が速まった。
昇降口のドアに寄りかかり、伏目がちに外を見ていた目がこちらを向く。
……なんだか、嬉しい。
人がたくさんいる中でただひとり、自分を待っていてくれることが、とても嬉しい。
嬉しくて駆け寄ると、呆れた顔で怒られた。
「走るな」
「ごめんなさい」
「……顔が伴ってないんだけど」
言われて気づく。ごめんなさい、と謝りながらも全然そんな顔をしていなかったことに。
「だって、嬉しかったの」
「何が……?」
単なる待ち合わせが。ツカサが私を待っていてくれたことが。人ごみの中に私を見つけて、遠くからずっと見ていてくれたことが嬉しかった。
そういうの、ツカサに話したらわかってくれるのかな。
「笑わない?」
「……笑うようなことなの?」
「そういうわけじゃないけど……」
授業間の休み時間や放課後の風景が一変して、「あぁ、あと少しでテストなんだな」と肌で空気を感じられるくらい。
私とツカサは昇降口での待ち合わせ。
取り立てて珍しくもなんともない約束だけれど、紫苑祭の準備期間に入ってからというものの、学校で会うこと自体がほとんどなかったため、久しぶりのことに少しドキドキしている。
人が溢れる昇降口にツカサの姿を見つけて胸の鼓動が速まった。
昇降口のドアに寄りかかり、伏目がちに外を見ていた目がこちらを向く。
……なんだか、嬉しい。
人がたくさんいる中でただひとり、自分を待っていてくれることが、とても嬉しい。
嬉しくて駆け寄ると、呆れた顔で怒られた。
「走るな」
「ごめんなさい」
「……顔が伴ってないんだけど」
言われて気づく。ごめんなさい、と謝りながらも全然そんな顔をしていなかったことに。
「だって、嬉しかったの」
「何が……?」
単なる待ち合わせが。ツカサが私を待っていてくれたことが。人ごみの中に私を見つけて、遠くからずっと見ていてくれたことが嬉しかった。
そういうの、ツカサに話したらわかってくれるのかな。
「笑わない?」
「……笑うようなことなの?」
「そういうわけじゃないけど……」