光のもとでⅡ
 つまり、今日の今日まで赤組の副団長に翠が任命されていたことは伏せられていた、もしくは、外に漏れることがなかったのだ。
 翠が意識して隠していたかは知らない。が、組としては、間違いなく話題性を持たせる意図があった気がする。
 グラウンドに着くと、観覧席の一角に赤組が集まっていた。どうやら練習が終わったところらしい。
 集団の中に海斗を見つけ呼びつける。
 軽快な足取りで観覧席を上ってきた海斗は、
「翠葉なら帰ったけど?」
「さっきすれ違った」
「……は? 会ったの間違いじゃなくて?」
「声をかけたら何も話したくないし訊かれたくもない、って拒絶されたんだけど、外で何があった?」
 冗談を言っているわけではないと悟った海斗は、自分が知っていることを淡々と話し始めた。
「練習中に貧血で倒れたんだ。幸い、飛翔が頭をかばってくれたから大事にはいたらなかったんだけど、見事に意識失ってて、三十分くらい保健室で休んでた。そのあと、グラウンドに戻ってはきたんだけど、団長と飛翔と何か話してすぐ帰っちゃったんだ。俺が知ってるのはそれだけ」
 たぶん、俺が翠と会ったのはそのあとなのだろう。
 あんな顔をしていたからには、風間と飛翔と話した際に何かがあったと思うべき――。
 次なるターゲットを定めると、ふたりは自分たちから俺に寄ってきた。
「藤宮がここに来るってことは、御園生さん絡みでしょ?」
「何があったのか知りたいんだけど」
「へぇ……さすがの藤宮も、御園生さんが絡むと下手に出るんだ?」
 からかいの響きを匂わせる人間の相手はしたくない。
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