光のもとでⅡ
 翠は何を想像したのか、鎖骨あたりから上すべてを赤く染め上げる。目を逸らす動作が意地悪心に油を注ぎ、
「翠は誰と踊るつもり?」
「……ツカサ以外の人なんていないもの」
 翠は小さな声で訴えた。
「なら、パートナーのドレスくらい把握しておきたいんだけど」
 翠は長ランを自分の脇に置き、幾分か落ち着きを取り戻してから、
「明日、六時半に来てもらえることになっているのだけど……練習は大丈夫なの?」
「一日くらい俺がいなくてもなんとでもなる」
「そう?」
「そう」
「……なら、一緒に選んでほしいな」
 にこりと笑んだ顔に満足した俺は、休憩時間にピリオドを打った。

 翠の勉強を見始めて一年と半年。
 俺の教え方が身についたのか、始めの頃と比べると勉強のスピードが格段にアップしていた。
 最近では十二時までかからず、十一時半過ぎまでには終えられる程度には。そして、今日に至っては十一時半には終わっていた。
 帰ろうとした俺を引き止めた翠は、
「お茶、淹れなおしてくる」
 と部屋を出て行った。
 早く休める日は早く休ませたい。
 そうは思ったが、何分学校で会う機会がまったくないだけに、ふたりで過ごせる時間が貴重であることも事実。
 お茶を飲む時間くらいならいいか、と翠を待っていた。
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