光のもとでⅡ
 練習が始まって二十分が経過した頃、
「翠葉っっっ」
 海斗の声に何事かと隣を見ると、御園生翠葉がぐらりと傾いだ。
 バスケットボールをキャッチする要領で頭を抱えたものの、頭を抱えたところで倒れることを防げるわけではなく、俺は御園生翠葉の頭を抱えたままその場に尻餅をついた。
 手に収まる頭はバスケットボールよりも小さく感じる。そして、長い髪の合間から見える頬に赤味は差していなかった。
 駆けつけた海斗と佐野が声をかけても御園生翠葉は反応を見せない。完全に気を失っていた。
 何を思ったのか、海斗は横たわる御園生翠葉のポケットから携帯を取り出すと、すぐにディスプレイを表示させる。そこには、よくわからない数値が並んでいた。
「何それ」
「翠葉のバイタル」
「は?」
「ま、色々あんだよ。団長、俺、保健室に連れてきます」
「頼んだ」
「飛翔、咄嗟に頭かばってくれてありがと。助かったよ」
 海斗は佐野とふたり揃って校庭をあとにする。
 その背を見ながら団長は頭を掻く。
「今日初めての屋外練習だったからかなー? それとも、やっぱ色々負担だったかな?」
 俺は知っていることをすべて話すことにした。
「実は今、会計の仕事を全部あの人がやってるんです」
「は……?」
「そのうえ、司先輩の長ランを作ることになったそうですよ」
「……マジ?」
 俺は無言で頷いた。
「これはちょっと色々話を聞いたほうが良さそうだなぁ……。ま、御園生さんが戻ってきてから話そう」
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