光のもとでⅡ
 御園生翠葉は四十分ほどで戻ってきた。
 先に気づいた団長は休憩を言い渡し、走って観覧席へ向かった。
 その背を追って校庭を離脱するも、どんな話になるのか、と考えただけで面倒臭さが全面に出てしまう。
「もう大丈夫?」
「はい。ご迷惑をおかけしてすみません……」
「急に倒れるからびっくりしたよ。ま、今日は暑かったし初めての屋外練習だったしね」
「本当にすみません……」
「いいよいいよ。あ、咄嗟に飛翔が頭かばってくれたから大丈夫だとは思うけど、頭痛かったりしない?」
「……大丈夫です」
「そう、なら良かった。ま、ちょっと座ろうか」
 俺はふたりからは少し離れたところに立っており、御園生翠葉は団長に言われて観覧席に浅く腰掛けた。
「飛翔に聞いたんだけどさ、生徒会の会計の仕事、ほぼほぼ御園生さんに振られてるんだって? もしかして応援団と会計、衣装作りで結構負担になってたりする?」
 御園生翠葉は目を泳がせ硬い表情で口を噤む。
 その様は、呼吸をしているのかすら怪しい。
 同じことを感じたらしき団長が深呼吸を促すと、びっくりした顔を団長に向けた。
「ほら、吸って……吐いて……吸って……吐いて……」
 そこまでされて、ようやく呼吸再開。
 やっぱり手間のかかる人間にしか見えない。
「もう一度訊くよ。今、結構しんどい?」
 御園生翠葉は情けない顔で口を真一文字に引き結ぶ。
 ここで白状しなかったら本当のバカだけど……?
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