光のもとでⅡ
 この仕事を四人で分担していたら……。
 シフトを組むにしても引継ぎは必要だろうし、メールへの対応はここまで迅速にとはいかなかっただろう。ゆえに、組から上がってくる収支報告にだって遅れが生じたはずだ。
 それらを考えれば、この女が引き受ける利点はあったのかもしれない。
 現状況を客観的に見れば、御園生翠葉がひとりで会計を請け負うことが最良の方法だったように思える。ただ、想定外だったことがひとつ――あの女が副団長に任命されることだけは誰にも予想ができなかったのだろう。
 エクセルを閉じようとしたとき、昨日見たときにはなかったシートが追加されていることに気づく。それを開くと――。
「なんだよこれ……」
 そこには当日の集計をスムーズにするための方法が競技ごとにまとめられていた。
 それらは会計の俺たちが工夫を図るというものではなく、体育委員と実行委員の了承を必要とするものばかり。
 すでに調整が終わっているものとまだ終わっていないものに分けて記されている。
「あの人、収支報告とリトルバンク、メールの返信に加えてこんなことまでやってたかよ……」
 一見してなんてことのないようなものばかりだが、これらの交通整理ができているのとできていないのでは当日のウェイトが明らかに変わってくる。
 残りのシートを開いてみると、競技ごとに集計しやすい表が作られていた。しかし、エクセルにはあまり慣れていないであろうことがうかがえる。
 思わず脱力してテーブルに突っ伏した。
< 889 / 1,333 >

この作品をシェア

pagetop