光のもとでⅡ
 戻ってくるなり、御園生翠葉はカメラマンへと駆け寄る。
「あの、部長にはとっても申し訳ないのですが、セルフタイマーを使ってもいいですか?」
 また何を言い出すのかと思えば……。
「えっ? 俺、撮らなくていいの?」
「すみません……。人に撮られているとどうしても構えちゃうので……」
「それなら、この機種スマイルシャッターが使えるからそれを使えばいい」
「ありがとうございます」
 自己中女は留まるところを知らないらしい。
 三脚にカメラが取り付け終わると、御園生翠葉は周りを見渡しおずおずと申し出る。
「あの、すみません――体育館から出ていてもらえるとありがたいのですが……」
「面倒くせー女」
 俺は一言本音を残して体育館をあとにした。

 態度を改めよう、そうは思ってもなかなか難しい。
 どうしてか、視界に認めると苛立つことが多いのだ。
 あの女の何が気に食わないのか。
 司先輩が会計に起用した女だから? しかし、中等部で会計を手伝っていた簾条先輩に同様の感情を抱いたことはない。
 何が気に食わないのか自分でも理解できないだけに性質が悪い。
 体育館を出ると、ところどころから掛け声や応援合戦の練習の声が聞こえてくる。うちの組は、校庭でムカデ競争の練習をしている頃だろう。
 そんなことを考えていると、朝陽先輩に声をかけられた。
「飛翔はどうしてそんなにイラついてるの?」
「別に……」
「別にってことはないだろ? 生徒会に入ってから翠葉ちゃんに絡んでばかり」
「絡んではいません」
 できれば関わりを持ちたくないくらいだ。
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