光のもとでⅡ
 チアの格好にはちょっと不釣合いにも思えなくはないが、さっきと比べると姿勢もポーズも格段に良くなっており、「問題ない」と判断できる写真だった。
「……突破口があるならとっとと提示しろよ」
 どうしてそんな言葉を口にしたのかわからない。
 ただ、心当たりがあるとしたら、御園生翠葉にはこんなふうに接するのが当たり前になっていて、普通に声をかけることができない。自分の中にちょっとした抵抗があることは理解していて――。
 理解できるものとできないものが頭の中に混在していて収まりがつかない。
 むしゃくしゃした気分のまま体育館を出てテニスコートを突っ切ると、
「飛翔くんっ」
 背後から名前を呼ばれた。
 たぶん、っていうか間違いなく御園生翠葉。
「何……」
 振り返ると、少し息を弾ませた御園生翠葉が立っていた。
「あの、撮影に時間がかかってごめんなさい」
「実質的には時間内に終わったから問題ないだろ?」
「うん、でも、迷惑はかけたと思うし、飛翔くんが言うことはもっともだと思ったから」
「なら、次からは考えて行動して」
「はい」
 なんでこんなに素直なんだよ。
 そんなところにもむしゃくしゃする。
 そんな俺を前に御園生翠葉はわかりやすく息を深く吸い込んだ。
「会計の仕事のことなんだけどっ――」
 何を言われるのかと一瞬構えたが、言わせるより先に自分が口を開いていた。
< 897 / 1,333 >

この作品をシェア

pagetop