光のもとでⅡ
「最後までやりきれよ」
「……え?」
「……あのさ、何か勘違いしてるみたいだから言っておくけど、俺は会計職がやりたくて仕事を分担するよう勧めてたわけじゃない」
 事実、会計職がやりたくて反対していたわけではない。それに、これから言うことが本当の理由でもない。でも、後付の理由でも口にしない限り、俺はずっとこんな対応しかできない気がするから
――。
「……あんたわかってんの? あんたが運動できないってわかってる時点で、どうしたって紫苑祭当日にかかるウェイトはあんたが一番重いんだよ。それなら、それまでの負担は俺たちが負うべきだと思ってた。なのに、仕事独り占めしてバカなの? あんたバカなの? 絶対バカだろ?」
 嘘を吐く趣味はないが、嘘八百並べてしまった。
 俺はただ、この女を認めたくなかっただけだ。司先輩がひとり起用したこの女を認めたくなかっただけ。
 でも、あそこまでの仕事を見せられたら認めないわけにはいかなくて……。でも、易々と認めるのは悔しくて、まだ抵抗があって、結果こんな言い方しかできない。
 しかし、御園生翠葉はふわりと笑んだ。
「何笑ってんの」
「ううん、ごめん、嬉しくて」
 まさか信じた、とか……?
 こいつ、「疑う」って言葉知らないのっ!? 何、俺が言ったこと全部真に受けてんのっ!? しかも泣くとかやめろよっ――。
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