光のもとでⅡ
紫苑祭前編

Side 翠葉 01話

 紫苑祭一日目――空は雲に覆われていた。でも、降水確率は三十パーセントだし、見たところ雲は白く、灰色味を帯びた雲はない。よって、雨が降ってくることはないだろう。
 長袖の制服を着ていても暑くも寒くもないくらいだから、運動をする人たちにはちょうどいい気候かもしれない。
 去年は海斗くんも一緒に登校したけれど、今日はツカサとふたりきり。
 マンションのエントランスで朝の挨拶を済ませると、ツカサはいつものように体調を尋ねてきた。
「体調は?」
「具合、悪そうに見える?」
「いや、そういうわけじゃないけど……」
 ツカサは決まり悪そうに口ごもる。
 そんなところもいつもと変わらない。
 訊かれるたび、私がもっと気の利いた返事をできたらいいのだけど、残念なことにこれといったものは思い浮かばず、いつも代わり映えのしない言葉を返すことになる。
 それでも、ツカサがこの会話を持ち出さない日はないし、私が答えない日もない。
 ある意味、私たちの日常だ。
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