光のもとでⅡ
 レンタル障害物競走が進むにつれて気づいたことといえば、ひとつとして「物」を借りてくる、という指示がなかったこと。「借りるもの」はすべて人間で、もっと言うなら人気のある男子に限定されていた。
「こりゃ、女子が喜ぶ競技っていうかイベントだな」
「そうですね」
 競技が始まった時点では男女同じくらいの応援模様だったのに、今となっては断然女の子の甲高い声が目立っている。
 応援に徹する女の子たちはトラックの際から身を乗り出し、手に持つ携帯やデジタルカメラで何を気にすることなくパシャパシャと写真を撮っている。
 それらを見ながら、
「紫苑祭が終わったら、肖像権に関するプリントを配布することになりそうですね」
 このプリントは、球技大会や陸上競技大会のあとにも配られる。
 去年の紅葉祭のときも配られたのだから、紫苑祭後も間違いなく配られるだろう。
 不機嫌そうな表情でツカサがフォーマットをプリントアウトしている姿が目に浮かび、思わず声に出して笑ってしまった。すると、
「何か面白いことでも思いついた?」
「いいえ。ツカサが不機嫌な顔でフォーマットをプリントアウトしているところが想像できてしまって……」
「あ~……」
 優太先輩は中途半端に口を開けたまま言葉を濁す。
「優太先輩……?」
「いやさ、前までなら自分の写真が出回るのが嫌だったんだろうな、って思うんだけど、今は違うんじゃないかなと思って」
「……え?」
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