光のもとでⅡ
 誰かを好きになるのは不可抗力だと思う。気づけば心を占める割合が多くなっていて、気づいたときには手遅れ。
 制御などしようと思ってできるものではない。
 ブレーキをかけようと思えば思うほどに、想いはどんどん膨れ上がっていく。
「好き」という気持ちが溢れてどうにもならなくなったとき、その人たちはどうするのだろう。
「……気持ちを伝える自由はあるのでしょうか」
「人によりけり、かなぁ。対外的に、婚約者以外の相手を好きになること自体がアウトって人は、友達と恋愛話することもできないって聞いたことがある」
 私が目を白黒とさせていると、
「ま、それはごく一部の人間の話。あとは、それなりにジンクスやなんやかや楽しんでるよ」
 言われてみれば、今回の紫苑祭準備期間においても誰が誰の衣装を作っただの、誰が誰にハチマキの交換を申し出ただの、その手の噂は絶えることなく日々飛び交っていた。
「パートナー制って聞いたことない?」
「パートナー制……ですか?」
「うん。告白されるときに『パートナーになってください』って言われたこととか、ない?」
「あ、それなら何度か……」
 でもそれは去年の紅葉祭前のことで、後夜祭におけるパートナーの申し込みだと認識していた。
「うちの学校内における『パートナー』って、彼氏彼女のことなんだ」
「……え?」
「つまり、おおっぴらに付き合うってことができないから、パートナーって言い方をしてるわけ。学校内では彼氏彼女っぽい振る舞いをしていても、学校を出たら単なる友達。そういう線引きをした関係」
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