光のもとでⅡ
「御園生先輩と私と、どっちがうまいか競わせてくださいっ。体育の授業にも出ていない御園生先輩にダンス部の自分が劣るとは思いませんっ」
 真っ直ぐすぎる視線に捕まり私の呼吸は停止した。
 瞬きもできずにいると、
「……だって。御園生さん、どうする? 受ける受けないは御園生さんが決めていいよ」
 私を振り返った風間先輩は、ボールでも投げる要領で選択権をくれたけれど、気分的には投げられたボールを誰かにパスするか避よけてしまいたい気分だ。
 そんな私にも風間先輩は追い討ちをかけてくれる。実ににこやかな表情で、
「時間押してるから御園生さんも答えは早く出してね?」
 私は反射的に愛想笑いを返していた。
「……一分――いえ、三十秒ください」
 考えることに集中したくてみんなに背を向けたとき、体育館中の視線を集めていることに気づく。
 トラブル発生を察知したのかみんなの動作は止まっており、練習そのものがストップしてしまっていたのだ。
 急いで答えを出さなくちゃ……。
 私は腕時計に視線を落とすことで周りをシャットアウトすると、秒針を追いながら自分の気持ちと向き合う。
 谷崎さんに対し、「なんで今更」という気持ちはなくもない。
 その一方、自分の選ばれ方に私自身も戸惑いを感じていたことを思い出す。
 ワルツは通常各学年一組、ダンス評価の高い人が選出される仕組み。
 今回その法則に則って決められたのは静音先輩と風間先輩、桃華さんと海斗くんだけなのだ。
 私においては「姫」だから。そして佐野くんは、私が抵抗なく接することのできる男子だから。
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