光のもとでⅡ
「二学期が始まってすぐ、御園生さんと同じ組ってわかったときから、うちのクラスは姫である御園生さんを担ぎだす気満々だったんだよね。副団長を決めるとき、各学年ひとりにしたのも一種策略みたいなもん。海斗たち、一年の頃から球技大会の表彰台に御園生さんを必ず上げてただろ? だから、紫苑祭でもそういうポジションに御園生さんを推すであろうことは予測済みだったんだ。結果、三年の目論見どおり事が運んで副団長のお姫様誕生。それから、姫といえばダンスの代表になるのも恒例。ぜひ了承してもらいたかったんだよね」
「でも、翠葉が運動できないって団長は――というより三年は知ってたでしょ?」
 海斗くんの質問に風間先輩は頷く。
「まぁね。毎年使われるテンポの速いワルツじゃ無理だろうなぁ、くらいのことは知ってた。そこで静音が提案したのがスローワルツ。本人に直接訊くのが手っ取り早かったんだけど、がっちり囲い込んでから打診するつもりだったから、御園生さんの身体に一番詳しいであろう藤宮のところに確認しにいった。藤宮から得た回答は、スローワルツで短い曲ならおそらく大丈夫。そこまで裏をとってから体育委員と実行委員を抱きこみました。姫を参加させるから曲変えろ、って」
 軽快に話す風間先輩に対し、聞いている私たちは誰ひとりとして相槌を打てる人がいない。
 もしこの場に静音先輩がいたなら、クスクスと笑いながら相槌を打っていたのかもしれないけれど……。
 風間先輩は何を気にすることなく話し続ける。
「つまり、すべてに手を回した状態で御園生さんに打診したんだ。運動はできないし、ワルツも踊れないって断られるのを前提で」
 その日のことはよく覚えている。
 組分け発表の翌日、風間先輩と静音先輩が昼休みにやってきたのだ。
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