光のもとでⅡ
「御園生さん、ダンス部門のワルツに出てみない?」
まるでお茶に誘う感じで尋ねられ、
「静音先輩、私、運動は――」
「うん、知ってる。激しい運動は、できないんでしょ?」
風間先輩が言葉を区切って話す意味を考えていると、
「御園生さん、スローワルツって知っているかしら?」
静音先輩に尋ねられたのだ。
「……ゆっくりなワルツのことですか?」
「えぇ、とてもゆったりとしたワルツなの」
風間先輩はポケットからミュージックプレーヤーを取り出し、小さなスピーカーから大音量で曲を流してくれた。
確かにテンポはゆっくりだけれど……。
「言葉で説明するだけじゃわかんないか。静音、実際に踊って見せたほうが早い」
そう言って、ふたりは私の前で曲に合わせて踊りだしたのだ。
見せられたダンスは去年紅葉祭の後夜祭で見たワルツとは違い、私にも踊れるかもしれない、と思えるほどゆったりとしたダンスだった。
「どうかしら?」
「でも、私は授業に出ていないので、ダンス自体が初めてです。これから覚える私よりも、すでに授業で習っている人のほうがいい得点を得られるんじゃないですか……?」
すると、クラスメイトが後押しをするように声をかけてくれた。
「休み時間や放課後を使って教えるし、今からなら紫苑祭まで二ヶ月近く準備期間があるから大丈夫だよ」と。
それでも、「うん」と答えるには至らなかった。
なぜかというならば、ワルツの曲は毎年決まった曲がかけられることを知っていたから。
そのことを風間先輩に話すと、
「じゃ、曲をスローワルツに変更できたら出てくれる?」
そこまで言われてようやく、私は了承したのだ。
ただ、その時点で私がワルツのメンバーに確定したわけではなく、あくまでも実行委員と体育委員の了承を得られてから。さらには、組の全体集会で話し合って可決されたら、という話だった。
ふたつの委員会を通さなくてはいけないうえ、藤宮の伝統とも言われるワルツ競技の曲を変更するとなれば、先生たちにおうかがいを立てる必要も出てくるかもしれない。
どのみちすぐに答えはでない――そう思っていたところ、結果は翌日に知らされた。
お昼休みの放送、「実行委員からのお知らせ」という形で。
まるでお茶に誘う感じで尋ねられ、
「静音先輩、私、運動は――」
「うん、知ってる。激しい運動は、できないんでしょ?」
風間先輩が言葉を区切って話す意味を考えていると、
「御園生さん、スローワルツって知っているかしら?」
静音先輩に尋ねられたのだ。
「……ゆっくりなワルツのことですか?」
「えぇ、とてもゆったりとしたワルツなの」
風間先輩はポケットからミュージックプレーヤーを取り出し、小さなスピーカーから大音量で曲を流してくれた。
確かにテンポはゆっくりだけれど……。
「言葉で説明するだけじゃわかんないか。静音、実際に踊って見せたほうが早い」
そう言って、ふたりは私の前で曲に合わせて踊りだしたのだ。
見せられたダンスは去年紅葉祭の後夜祭で見たワルツとは違い、私にも踊れるかもしれない、と思えるほどゆったりとしたダンスだった。
「どうかしら?」
「でも、私は授業に出ていないので、ダンス自体が初めてです。これから覚える私よりも、すでに授業で習っている人のほうがいい得点を得られるんじゃないですか……?」
すると、クラスメイトが後押しをするように声をかけてくれた。
「休み時間や放課後を使って教えるし、今からなら紫苑祭まで二ヶ月近く準備期間があるから大丈夫だよ」と。
それでも、「うん」と答えるには至らなかった。
なぜかというならば、ワルツの曲は毎年決まった曲がかけられることを知っていたから。
そのことを風間先輩に話すと、
「じゃ、曲をスローワルツに変更できたら出てくれる?」
そこまで言われてようやく、私は了承したのだ。
ただ、その時点で私がワルツのメンバーに確定したわけではなく、あくまでも実行委員と体育委員の了承を得られてから。さらには、組の全体集会で話し合って可決されたら、という話だった。
ふたつの委員会を通さなくてはいけないうえ、藤宮の伝統とも言われるワルツ競技の曲を変更するとなれば、先生たちにおうかがいを立てる必要も出てくるかもしれない。
どのみちすぐに答えはでない――そう思っていたところ、結果は翌日に知らされた。
お昼休みの放送、「実行委員からのお知らせ」という形で。