光のもとでⅡ
 でも、そこまでばれているのなら隠す必要もない。
「兄さんと義姉さんに価値観の差ってある?」
「あるけど……そこをうまく折り合いつけていくのが夫婦だし」
 兄さんの言葉に考えてしまう。
 俺と翠は付き合っているだけで夫婦ではない。でも、いずれはそうなるのだから、今からすり合わせ作業をしていっても無駄にはならないわけで――。
 でも、翠は「どれだけ話しても平行線」であることを口にした。それは、歩み寄る努力はしないということだろうか……。
「話をしたい」とは言ったけど、それは「フォロー」であって、すり合わせ作業では、歩み寄る努力ではないのだろうか。
 綿密に分けるとしたら何に当たるのか――。
「価値観の差がどうしたの?」
 義姉さんに尋ねられ、渋々翠に言われた言葉を伝える。すると、
「なるほど……。それ、聞き流したらだめだからね?」
 聞き流せるような言葉じゃなかった。だから今、兄さんたちに話しているわけで……。
「そう言われて司はどう思ったの?」
 兄さんに尋ねられ、抵抗はありつつもそのときに感じたことを口にする。
「ま、そうだよな。そんなふうに言われたらショックは受けるよな。でも――」
 兄さんの言葉を遮るように義姉さんが口を開いた。
「それを口にした翠葉ちゃんがどんな気持ちだったかは考えた?」
 翠の気持ち……?
「こういうことを言うとき、翠葉ちゃんがどんな表情なのか想像はつくけど、少し笑みでも浮かべてたんじゃない?」
 当たりだ……。
 あのとき翠は、少し笑みを浮かべて割り切ったように話していた。それはもう、毅然と見えるほどに。
「それ、単なる強がりだし心からそう思ってるわけじゃないよ。どうやっても理解し合えない部分だってあるよね、って割り切ることでしか自分を守ることができなかっただけだからね? それとか、あの子優しいから自分の考えを司に押し付けないようにって気持ちもあったかもしれないし、勘違いしちゃだめだよ?」
 その言葉に新たなる衝撃を受けた。
< 998 / 1,333 >

この作品をシェア

pagetop