片恋シリーズ~鎌田公一編~
 俺はポケットから携帯を取り出し受信メールを表示させた。
 本当はわかってるんだ。なんでこんなにも引き摺っているのか……。
 先日、転送に転送を重ねたメールが届いた。内容は、彼女が超難関校と言われる私立藤宮学園に進学した、というもの。
 最近の噂はメールで回ってくるため、伝言ゲームよろしく、内容が二転三転してるとは思いがたい。けれど、一年遅れということと彼女の学力を考慮しても藤宮は難しいんじゃないかと思えば、半信半疑にならざるを得ないわけで……。
 実際、自分の知り合いが見たというのなら信じられもした。けれど、しょせんは誰から回ってきたのかわからないようなメールだ。確かめようにも、本人に訊く手段は持たない。
 俺が知っている彼女のパーソナルデータは中学のとき止まり。つまりは氏名のほか、家の住所と電話番号しか知らないのだ。メールアドレスのひとつでも聞けていたらよかったのに。
 そんなことを五月中ずっと考えていた。
 なんて進展性のない悩み……。
< 30 / 118 >

この作品をシェア

pagetop