片恋シリーズ~鎌田公一編~
 一気に心拍数が上がる。
 あの噂、本当だったんだ……。
「御園生?」
 あまりにも信じられなくて、名前を口にしながら疑問符をつけてしまう。
 御園生は、「え?」と不思議そうに俺を見上げ、視線が交わって数秒で「あ……」と口を動かした。
 黒目がちな目がさらに開かれた瞬間だった。
「それ、藤宮の制服……。噂では聞いてたんだ。留年して藤宮に通ってるって。……良かったね」
 なんかもっと気の利いた言葉をとは思うのに、こんな言葉しか出てこなかった。
「うん、そうなの。鎌田くんは……その制服、海新高校?」
「うん」
「……学校、どう?」
 御園生から疑問を投げかけられるとは思いもしなくて、俺は一気に舞い上がる。
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