片恋シリーズ~鎌田公一編~
 俺には全然なくてイケメンがたっぷり持っているもの。それは、「余裕」だと思う。
 悟った瞬間、俺は情けなく逃げるようにその場を走り去った。
 走ってショップを飛び出し、俺の心に残ったのは空虚感だった。塾に行っても虚無感半端なくて、それは翌日学校に行っても部活に出ても拭うことはできなかった。

 それから一週間して、ハルに改めて突っ込まれた。
「で、何? いい加減白状しちゃいなよ。もう五月病じゃ通らないよ」
 あの翌日もハルに突っ込まれたけど、俺は五月病という理由を駆使して免れていた。しかし、昨日で五月が終わってしまったため、これといった逃げ道がなくなった。
「俺、そんな塞いでるように見える?」
 少しでもいいから話を逸らせないものかと試みる。と、
「だってさぁ……かまっちゃんわかりやすいんだもん。沈んでるでしょ?」
 沈んでる……?
 ま、確かにあんなイケメンと御園生が一緒にいるところを見てしまったら、それはへこむというものだ。
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