片恋シリーズ~鎌田公一編~
 入学してしばらくは彼女の噂で持ちきりだった。
 何部に入っただの、何委員会に入っただの。それこそ、何かあるたびに噂となって情報が回ってきた。
 彼女は部員が少ないことで有名な読書部に入り、図書委員になった。
 噂から情報を得た自分も図書委員に立候補したわけだけど、同じことを考えた人間は多く、結局同じ委員会になることも適わなかった。
 四月が終わる頃、彼女を取り巻く噂が少しずつ変化を見せた。
 女子の噂はたいてい女子から広まるわけだけど、彼女の場合は少し違った。
 彼女と同じクラスになった男子や、彼女目当てで図書委員になった男子から広まった噂はこんなもの。
「無視する」「高飛車」「無愛想」――。
 俺は一度しか彼女と話したことはないけれど、そんな印象は抱かなかった。ましてや、トレイ前で落としたハンカチを拾ってくれるような子だ。人違いかも、と思えばすぐに引き下がる。相手が困らないように気を遣って。
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