片恋シリーズ~鎌田公一編~
 きっと、御園生が彼らを「友達」と呼ぶほどの場所に自分はいない。
「……少なくとも、自分の前で御園生が具合悪そうにしているのを見て見ぬ振りをしたことはないけれど、御園生が苦しんでいることを誰に言えたわけでもない、という意味では『見て見ぬ振りしてきた人間』かもしれない」
 隣を歩く彼は歩く速度は緩めずに、じっと俺を見ていた。
「……翠葉の言葉を信じるよ」
「え……?」
「鎌田くんだけは大丈夫。翠葉、そう言ったろ?」
 言った、確かに……。
「翠葉、だめな人間の前では本当にだめで、俯くし身体をカチコチに固まらせる」
 そうなんだ……。
「掴みかかって悪かった、ごめん……」
「いや……なんか安心した。御園生の周りにいい友達がたくさんいるって知れて」
「……君、お人よしって言われない?」
「……さぁ、どうだろう? 因みに、俺は鎌田、鎌田公一(かまたきみかず) 」
「俺は藤宮海斗。海斗って呼んで」
 彼は人懐こい顔でニッ、と笑った。
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