片恋シリーズ~鎌田公一編~
 保健室に入ると、藤宮くんそっくりの校医に出迎えられた。
「湊ちゃん、翠葉が倒れた」
「倒れたときの状況は?」
「鎌田くん、お願い」
 お願いって言われても……。
「話している途中で突然……」
 それ以上に話せることはない。
「倒れる直前の会話内容を訊いてもいいかしら?」
 倒れる直前……?
「……インハイの予選が幸倉運動公園であったって話をしている最中に倒れました」
「それは翠葉が口にした話? それとも君が口にした話?」
「話の流れで、中学の人間に何か嫌な思いさせられたかを訊いたんです。そしたら、インハイ予選の話を始めて、すぐに倒れました」
 すると、校医は舌打ちをし、海斗くんも苦い顔をした。
「あの、何か……?」
「いえ、なんでもないわ。血圧も脈拍も体温も、何も悪いものはないから少ししたら気がつくでしょう。それまでは休ませる」
 校医は、御園生が寝ている場所のカーテンを引いて出てきた。
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