片恋シリーズ~鎌田公一編~
 嬉しかった……。
 ずっと、自分が御園生の目にどう映っていたのかを知りたいと思っていたから。
 あの日、知りたいと思っていたことの答えをもらえた気がして、すごく嬉しかった。
 それで終わりかと思えばまだ言葉は続く。
『鎌田くんはいつも穏やかに話す、安心できる笑顔をくれる人だったよ。……でも、今みたいに声を立てて笑ったところは見たことないと思う。今はとても楽しそう』
「……なんか嬉しいな」
『え……?』
「あの頃、御園生って学校の中のものを何も見ないようにしてる気がしてた。でも、その視界にちゃんと入れてたことが嬉しい」
 ちょっと鼻の奥にツンときていて、目に涙が滲む。ドライアイにはちょうどいい湿り具合。
 目を閉じて、瞳全体に涙を行き渡らせ、再度目を開いた。
「お互い新しい学校でいい仲間に出逢えたんだから、高校生活楽しもうね」
『うん……』
「……とは言っても、俺はもうあと一年ちょっとしか残ってないけど」
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