片恋シリーズ~鎌田公一編~
 肩を竦めて笑う。と、携帯の向こうから御園生がクスクスと笑う声が聞こえた。
 耳が、ちょっとくすぐったかった。
『そうだね。同い年だけど一年先輩になっちゃったね』
「あ、そのことなんだけど……」
『ん?』
「隼人先輩も一緒にいた友達も、御園生が一年留年してるの気づいちゃったんだ」
 だからといって何を言う人たちではないけれど、黙っていることには気が引けて白状した感じ。
『鎌田くん、それは仕方ないよ。鎌田くんと中学の同級生なのに、私がいるクラスは一年なんだもの。クラスを訊かれて、私が一年B組って答えた時点で自分でばらしちゃったも同然。それに、今は留年したことをそんなに気にしてはいないの。……一年遅れなかったら、私は藤宮に来ることはなかったから……。もし、入院していなかったら、あのまま光陵高校に通うことになって、中学と何も変わらない学校生活送っていたと思う。そう考えるとね、「留年」なんて代償は軽いくらい』
 こんなにしゃべる御園生は初めてだった。それに、ひどく落ち着いた空気が伝わってくる。
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