全部、抱きしめて
「由里子、今日一緒に帰らないか?」

それは、大瀬良さんの電話での第一声だった。

「へっ? あのどうしたんですか?」

「いや、一緒に帰りたいなと思っただけだよ。ラーメンでも食べに行かない?」

「あー。だったら、近くのコンビニで待ってますよ。そこであたしを拾って下さい」

「会社の駐車場から一緒に帰ればいいじゃん」

「でも」

帰宅時間の今、色んな人が見てるわけで、変な噂立てられちゃうような。

「あっそ。潤とは堂々と一緒に通勤出来ても、オレとは帰れないんだな」

「へっ?」

「由里子と潤が仲良く通勤してたって、うちの事務員の女子達が騒いでたよ」

「......」

大瀬良さんに知られていたなんて。
< 100 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop