全部、抱きしめて
涙を拭っていると、ガチャッと部屋のドアが開く音がした。

あたしは慌てて目を閉じ寝たふりをしてしまう。

「由里子」と、名前を呼びながらあたしの顔を覗き込んでいる大瀬良さん。

目を瞑っているけど、視線をひしひしと感じる。

すると、大瀬良さんがあたしの上に乗っかってくる。

横向きになっている体勢から、仰向けにさせらている。

そして、軽く唇が触れた。
体が一瞬だけ反応してしまう。

あたしは必死に目を閉じたまま。
寝たふりを決め込む。

すると、今度は首筋にキスをしはじめる。

これは、大瀬良さんがいつもしかけてくるイタズラだ。

例えば、夜中眠っている時、あたしの体に触れて誘ってくる。




< 110 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop