全部、抱きしめて
紗江の言う通りだ。
これは、本人じゃないと分からない事だったりする。

『じゃあさ、もし直也さんに聞いて、浮気したって告白されたらどうするの?』

「それは...」

言葉が続かなかった。
分からない。

直也が浮気した過去を知ってどうするのよ?

『もっしもっしー、由里子さーん?』

少しの沈黙の後、紗江の呼ぶ声で我に返る。

『知りたきゃ聞く。知りたくなきゃ聞かないっていう、あたしには普通の事しか言えないや』

「そうだよね...」

『相手の過去なんて、一から百知る必要なんてないわけだし』

「紗江だったら、あたしの立場だったら聞くと思う?」

『えーっ。あたしだったら、聞いちゃうかな』



< 174 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop