全部、抱きしめて
直也の顔まともとに見れるかな?
そんな不安が少しだけ過る。


電車駅前のロータリーに移動して、15分くらいして直也の車が見えた。


「一人で何してた?」

車に乗ってすぐ直也に聞かれる。

「映画観てお店ぶらぶらしてた」

「ふーん。そっか...」

少しの沈黙の後、直也が口を開く。

「あのさ由里子、もしかして昨日の事怒ってたりする?」

「昨日の事?」

「あぁ。元妻の事とか。昨日オレが羽目を外してすげー飲んで遅く帰ってきた事とか」

「ううん。怒ってないよ」

そう。あたしは怒っているわけではないんだけど。

「それなら良かった」
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