全部、抱きしめて
「だって直也が会社の人と飲む時、遅く帰ってけるの初めてじゃないし」
「てっきり由里子は怒ってるのかと思ったよ。ほらいつもだったら、オレが起きてくるのが遅くて由里子が出かける時は、どこに行ってくるって紙に書いておいてくれるだろう?」
「あっ...。ごめん忘れてた」
「まぁいいや。由里子が怒って出かけたわけじゃなかったから」
直也はいつもと変わらない笑顔を浮かべている。
もしここで昨日、かおりさんから離婚した原因を聞いたと口にしたらどうなるんだろう?
直也の笑顔は一瞬にして消えてしまうのは間違いない。
『ーー相手の過去なんて、一から百知る必要なんてないわけだし』
紗江に言われた言葉を思い出す。
そうよ。
恋人の過去を一から百知らなくてもいい。
「てっきり由里子は怒ってるのかと思ったよ。ほらいつもだったら、オレが起きてくるのが遅くて由里子が出かける時は、どこに行ってくるって紙に書いておいてくれるだろう?」
「あっ...。ごめん忘れてた」
「まぁいいや。由里子が怒って出かけたわけじゃなかったから」
直也はいつもと変わらない笑顔を浮かべている。
もしここで昨日、かおりさんから離婚した原因を聞いたと口にしたらどうなるんだろう?
直也の笑顔は一瞬にして消えてしまうのは間違いない。
『ーー相手の過去なんて、一から百知る必要なんてないわけだし』
紗江に言われた言葉を思い出す。
そうよ。
恋人の過去を一から百知らなくてもいい。