全部、抱きしめて
あたしもタケルとの結婚が破断になり、それはもう落ち込んだ。

自分という人間を否定されたような気もしたし。

直也同様、今まで何不自由なく生きてきたあたしが大きな挫折を味わったような瞬間だったから。

「離婚してからしばらく荒れて、恋愛や結婚はもうこりごりだと思ってたんだけどな」

直也がポツリと言う。
あたしは黙って話を聞く。

「やっぱ、会社の人達や友達の恋愛話とか結婚話とか子供が産まれた話とか聞くとすげー羨ましくなるんだよな。で、彼女くらいは欲しいなと思い始めた頃、由里子にご飯誘われて、これは恋愛を始める一歩かもと思い誘いに乗ったんだよ」

「ねぇ? それってご飯誘ったのがあたしじゃなくても行った?」

我ながらなんてアホらしい質問。
でも、聞かずにはいられない。

「それはないかもな」

「どうして?」
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