全部、抱きしめて
外に出る為、玄関のドアを開けると、男の人が立っていた。

それもあたしのよく知っている人だ。

「い......一岡?」
「は......長谷部さん?」

あたしと男の人は声をハモらせた。

ただただ、互いが互いに驚くばかりだった。だってそこには上司の長谷部潤係長がいたんだから!
まさかこんな所で上司と出くわすなんて。

「潤、悪い。今日は相手出来ない」

動揺することなく冷静に口を開いたのは大瀬良さん。

「おい! 何で一岡がここにいるんだよ? 分かるように説明しろよ」

「何でって、泊まったからだよ。なっ? 由里子」

大瀬良さんに同意を求められ、無言で頷く。

「由里子って何で名前で呼んでるんだよ? まさかオレの部下に手を出したんじゃないだろうな?」
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