全部、抱きしめて
学生時代から使っている、スポーツバックに着替えを詰め込み(詰め込む程の量ではないけど)準備を済ませた。

バックを持って玄関を開けてすぐにあたしは声を上げてしまった。

「うわぁ!」

「悪い。びっくりさせちゃったかな?」

そこにいたのは、長谷部さん。

「どうしたんですか? 大瀬良さんは?」

「直也は取引き先から電話がかかってきて話込んでるよ。暇だからこっちに来た。さすがにうちの中に入るのはマズイだろうから、待ってたんだ」

今、あたしの部屋は人を入れられる状態じゃない。そいう意味でマズイ。

「そのカバン何が入ってるんだ?」

「これは」

「まぁ。予想はつくけどね。今日も直也の所に泊まるんだ?」

「......」

はいそうです。
とは、答えられず黙ってしまう。


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