全部、抱きしめて
長谷部さんは分かっている。
あたしと大瀬良さんが体の関係を持ってしまったことを。

「彼氏と別れたことも、びっくりだったけど、直也といつの間にか親密になったことの方がびっくりかもな」

「ですよね」

「それに、直也が2泊も女を泊めるなんて珍しいよ」

「そうなんですか?」

「あぁ。珍しいよ。直也って離婚した頃、すごく荒れてて来るもの拒まず状態の時があったんだ」

長谷部さんは言葉を続ける。

「女持ち帰りして、次の日には用なしみたいな感じで帰したりとかもあったみたいだし」

「へぇ......」

「他には気紛れでデートの約束して、当日になるとオレに電話かけてくるんだよ。『偶然を装おってオレと遭遇してくれ』みたいなこと言うわけ」

あたしは黙って話を聞く。
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