全部、抱きしめて
「オマエは何やってるんだよ!」

大瀬良さんの声がした。
すぐ側まで来ていたのに、長谷部さんに気をとられて全く気づかなかった。

ゴンッと音がしそうなくらいの勢いで、大瀬良さんは長谷部さんの頭をグーで叩いた。

「いってー」

長谷部さんは、頭を抱えて座り込む。
同時に掴まれていた手が離れて、あたしはホッとした。

「由里子、大丈夫だったか?」

「大丈夫です」

大瀬良さんのナイスタイミングのおかげだ。

「潤! 部下にこんなことして恥ずかしくないのかよ? これはセクハラだぞ。パワハラにもなるぞ。会社の制服着てないからって何やっても許されるなんて思うなよ」

「オマエこそ恥ずかしくないわけ? よその部署の女に手出しておいて。これはセクハラを超えるセクハラだぞ」

そう言って、座り込んでいた長谷部さんが立ち上がった。
< 40 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop