全部、抱きしめて
長谷部さんは、一方的に話をした後、ポケットから財布を取り出した。そして五千円を大瀬良さんに渡した。

「これ寿司代な。2人で行ってこいよ。邪魔者は退散するから」

「ありがたく頂戴しとく」

どうやら、大瀬良さんと長谷部さんの関係に遠慮というものがないらしい。

まぁ。互いに信用しあっている証拠だろうと思う。

「じゃあ、2人で楽しい週末過ごせよ。月曜日、会社で」

「潤、歩いて帰るのか? オレんちの近くの公園の駐車場に車停めてるんだろ? そこまで送るよ」

「いいよ。2人の時間を大事にしろよ」

長谷部さんは、そう言い残して背を向けて歩き出した。

2人の時間を大事にしろよ。
って、まるであたし達つき合い始めたみたいじゃない?

「やっと静かになったな」

大瀬良さんが苦笑いを浮かべた。

「そうですね」

「潤が暴走してわけの分からないこと言ってたけど、気にしなくていいから」

「はい」







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