全部、抱きしめて
あたしが会社で見かける大瀬良さんはいつもクールなイメージがある。

でも、今見ている彼は、スーパーの商品が安いと目を輝かせている。

何とも対照的な姿で笑いがこみ上げてきてしまったというわけ。


それから、大瀬良さんは、トイレットペーパーと玉子の他にお肉や野菜や冷凍食品をカートの中に入れていった。

あたしより家庭的だ。
そして、あたしより自炊の回数が多いと思う。(婚約破棄された原因はこの辺にもあるような気がしてきた)

「なぁ? ボディーソープどれがいい?」

お風呂用品のコーナーで、大瀬良さんが聞いてくる。

「由里子が選んでよ」

「えっと...。じゃあこれで」

目に留まったボディーソープを選んだ。

どうして.....?
あたしに決めさせるの?

このボディーソープを使うのは、今夜限りかもしれないのに。

やだやだ。
またこんな卑屈なこと考えてる。

大瀬良さんの行動一つ一つに動揺しているあたしがいる。













< 47 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop