全部、抱きしめて
しかも、肩は抱かれたままだ。
どうして? こんな演出をするの?

花火を見ながらキスなんて、生まれて初めてだった。

ううん。人前でキス自体が生まれて初めての体験。

大瀬良さんにとって、どうってことないことなんだろうか?

明日にはこの関係は解消される。
なのにあんなことするなんてズルイよ。

甘い時間と甘い夜。
これは、夢の中の出来事として処理するしかないのに...。

あたしはすっかり花火ところではなくなっていた。

そして、大瀬良さんは最後の最後まで肩を抱いたままだった。


花火が終わると、いっせいにみんな立ち上がりいっせいに帰り始める。

もちろんあたし達も。
帰り道も手を繋いで歩く。

「由里子、こっち」

大瀬良さんが左に曲がる。





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