全部、抱きしめて
そういえば昨日、Tシャツは必要ないみたいなこと大瀬良さんが言ってたけど、その通りだったね。

あたしは1人でクスッと笑った。


脱衣所を出た後、リビングへ。
着替えの入った洋服を取り出して身にまとう。

「さっ。帰ろう」

独り言を言ってみる。
そう。あたしは帰ることを決めていた。

だって、これ以上ここにいたら...
失恋したという現実を忘れてしまいそう。

どんどん、大瀬良さんに頼って甘えてしまう。

一人ぼっちじゃいられなくなる。
現実と向き合う強さを持たなきゃいけない。

大瀬さんとは、“同じ会社で働く人”の関係に戻るんだ。

カバンを持って、寝室へ入る。
まだまだ、夢の中にいる大瀬良さん。

「ありがとう直也」

< 64 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop