全部、抱きしめて
「あの時、起きてたんですか?」

「物音がしてたからな。ほっといたらどうするかと思ったら、まさか帰るとはな。由里子が家を出た後すぐにオレも家を出た。先回りして待ってた」

「あの。でも誤解しないで下さい。やり逃げとかではないですから」

「じゃあどうして帰った?」

「それは...」

あたしが言いかけた時、宅急便のお兄さんが近づいてきていることに気付いた。

そして、あたしと大瀬良さんの前で立ち止まった。

「こちら、一岡由里子さんのお宅でよろしかったですか?」と、聞かれて頷く。

荷物を受け取り、サインをすると、宅急便のお兄さんは爽やかな笑顔を残してその場を去っていった。

誰からだろう?
送り主を見てあたしは慌てた。

「タケル...」

元カレで元婚約者のタケルからだった。
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