全部、抱きしめて
こうして、長谷部さんとご飯を食べに行くことが決まった。


その日は何事もなく業務をこなしていき、定時上がり確定だったんだけだ...。

仕事終了間際の数分前、大瀬良さんが総務部にやってきた。

しかも、課長や部長や長谷部さんに用事があるわけではないらしい。

一直線にあたしのところへ。
一体、何?

「市岡に頼みたい事があるんだ。ちょっと会議室きてもらっていい?」

「はぁ...」

あたしは首を傾げた。
頼み事があるから、会社の内線やパソコンのメールで送ればいい。

頼みたい事なんて絶対に嘘。
すぐに分かった。
だって急いでいる感じもないし。

「すみません、市岡、お借りします。いいですよね? 係長」

係長ーー長谷部さんに聞くところが更に怪しい。

「どうぞ」
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